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映画『ダンス ウィズ ミー』やっちまったなー矢口監督

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 今日は8月16日に公開されたばかりの矢口史靖監督(『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』『ハッピーフライト』)、三吉彩花主演の『ダンス ウィズ ミー』を近くのシネコンに観に行ってきました。

 矢口監督の映画は今まで全て観ておりまして、今回はミュージカルコメディだということで、ミュージカルが苦手な私としては、嫌な予感はいたしましたが、思い切って鑑賞することに、、、(点が多くてすいません)。

 鑑賞に至った経緯としては、ミュージカルの不自然さを逆に利用して考えた映画だと矢口監督が答えていたのと、今まで観た矢口監督の映画は全て外れがなかったのが主な理由であります。

 映画は順風満帆の人生を歩いてきた主人公のOLが姪っ子と一緒に受けた催眠術によって、音楽を聴くとどんな時と場所でも歌って踊り出してしまうようになり、その催眠術を解くために東京から札幌まで進んで行ってしまう一週間を描いたミュージカルコメディロードムービーでした。

 前作の『サバイバルファミリー』(2017)の時もそうでしたが、矢口監督の映画で映る内容と関係ない無音のビル群の画がなぜか好きで、オープニングで映った時も劇中で映った時もなぜかテンションが上がりました。これは本当に綺麗です。

 また主演の三吉彩花さんも顔立ちが整っているので、映画の大きなスクリーンで観ても不愉快になりませんでした。スタイルもいいし、まさに美人さんでした。(それとは対照的に、憧れの会社の同僚役の俳優が上限値を超えた残念さだった。あの設定でスクリーンで観るにはあまりにも辛すぎる、可哀相です。まさに一般人以下でした。顎のしゃくれた汚い鯉みたいです。)

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 しかしです、、、。近年ミュージカルが流行っているのとその時流に乗ってコメディ映画を作るのは、予算も出るしヒットもしそうだという監督の色気もわかるんです。そして、それを逆手にとってミュージカル嫌いのヒロインがどこでも音楽を聴くと歌い踊り出してしまう設定も、それによって起こるドタバタコメディという展開も監督の頭の中で考えると面白いっていうことはわかるんです。それなのに、いざ映画化するといまいちになるという残念さ。

 でもそうなった原因の一つが、映画自体の肝心の「映像」で初めから終わりまでカメラが寄りすぎなんです。顔のアップも体のパーツのアップもちろん多いんですが、それ以外の建物も風景も全てやや寄りすぎなんです。だから、観ている時に圧迫感が強くて観ていて息が詰まりました。

 つまり、今作の物語とそれに出演している俳優全員にスクリーンに耐えうる力がないのを、意識的ではないと思うんですが、無意識に表してしまっているようにしか見えなかった。それをカバーするためにしたことだったのか。

 これまでの映画で監督が直接選んで面白い要因の一つになっていた適材適所の役者たちが今回全くいなくて、なぜか芸能事務所のプッシュしそうな俳優ばかりを使った失敗が招いた結果、寄りばかりの映像で内容も悪くなってしまうという残念な出来。

 また、ミュージカルというなら踊りも重要な要素であるはずなのに足の先から指の先まで全身が映った画が全くなかった。うまく踊っているから面白いという要素を差し置いて、下手なら下手なままで映っていてもいいのではないかとも思いました。それが怖いからなのか、踊っている主人公の女性の下手な面をかばう優しさなのかはわかりませんが、踊っていても顔を含めたパーツのアップばかりで、、、。

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 おまけにもう一つの映画の重要な要素である「音」がまずかった。様々な場所で様々なやり方で鳴る音楽(スマホ、生バンドetc.)が全くその出しているそのものの音とその場所の響きを有していない。そのことによって、完全にスタジオで録音したとはっきりとわかる音にしか聞こえず、全く映画に臨場感が出てこない問題を引き起こしていた。つまり、本当にその場で本物から音を出して、その音に合わせて歌う響きが完全にないことの偽物感。

 例えば、映画として好き嫌いは別として、『男はつらいよ』が必ず大ヒットしていた要因が音がいいことが挙げられるからです。昔からほとんどの日本映画がわずかの例外を除けば、音が常にこもっていて異常なぐらい臨場感がない。言い換えれば、音にその場の響きがないということがある。

 しかし、『男はつらいよ』は数少ない例外の音のいい映画の一つで、なぜかと言えば貸し出専用のカメラでアメリカのPanavisonを使っていたことが大きいからです。この会社の特許がフィルムが出す音を消して同時撮影同時録音ができるカメラそのもので、アメリカの映画のほとんど全てはこの貸出専用のカメラで撮られているからです。

 また、日本映画だけでなく世界中の映画が戦後の50年代以降に急速に衰えて、逆にハリウッドがしぶとく隆盛を続けたのもこういった独自の機材の影響が強いはずです。ピンマイクで拾ったりスタジオで吹き替えた音とは、臨場感、リアリティが全然違うから素晴らしい画が活きるし、その「音」と「画」が両輪となってこそより内容が観た人たちに強烈な印象を与えるからです。

 いわゆる庶民を描いた『男はつらいよ』の寅さんおなじみの歌って踊ってのシーンがピンマイクだったり、吹き替えだったら無意識に観客はしらけてるはずです(それでも音の強弱が強すぎるのはミキシングの問題ですが、、、)。 

 話は少し逸れましたが、今作『ダンス ウィズ ミー』は、観たらすごく面白いのになぜか大ヒットしなかった前々作の『Wood Job!』(2014)や前作の『サバイバルファミリー』(2017)によって引き起こされた迷走なのか、それによって嵌められた制作費の足かせによって撮らざる負えない状況から落ちてしまった質なのか。

 矢口監督の次回作が初めて見た今回のようなやっつけ仕事ではなく、元の水準に戻ることを期待したい。そして、鉄拳との対談で言っていた「お客さんが喜んでくれれば、監督の名前は意識してもらわなくていい」の発言が、今作が恥ずかしくて監督のクレジットを消したいの裏返しだったのか。次回作を観るまでわからないでしょう。期待して待ちたいと思います。監督やっちまったなー、残念。

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