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これぞ理想の生活か!?リアルサバイバー『洞窟オジさん』加村一馬 著

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洞窟オジさん―荒野の43年 平成最強のホームレス驚愕の全サバイバルを語る

 この本は、昭和34年の13歳から43年間人里離れひとりぼっちで自給自足生活をし続けた加村一馬さんの数奇な人生を振り返ったものです。

 このひとの存在は、ちょうど15年前ぐらいにテレビ朝日の朝の番組で、40年以上山の中で自給自足で生活していた人が捕まって、今は保護されている人がいると本人にインタビューと取材に行っているのを見てからずっと頭に残っていました。

 確かその時に、13歳の時に最初に犬のシロと住んだ足尾銅山の洞窟に行ったり、それからどういった形で生活していたのか簡潔にまとめられ語られていたと思います。見始めたときはインドかどこかにいた野人のアマラ、カマラ状態で、言葉も行動も常軌を逸しているのかなと思っていました。

 しかし、顔にぼかしが入った状態で普通に服を着て普通に受け答えをしているのを見て、逆に強く印象に残っていました。また、その時番組で言っていたのが、もっと不健康で悲惨な生活の結果疲弊していると思ったら、実際に会うと想像を超えて非常に健康で元気が良く、若いですと言っていたのも強く印象に残っていました。確か当時50代後半なのに老眼にもなっていなくて、木も飄々と登っていたような気がします。

 それでずっと記憶に残っていて、最近インターネットで検索をかけてみたら「洞窟おじさん」で引っかかって、最近だと2015年にリリーフランキー主演でNHKでドラマ化までされていたし、テレ朝の激レアさんでも取り上げられていたことを知りました。

 どちらも気がついた時には放送終了していたので、2004に単行本で発売され2015年に文庫化された本書『洞窟オジさん』を手に取ることにしました。

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 本に書いてあったことは、貧困と両親の虐待に耐えきれなくなって犬のシロと一緒に家からも群馬の人里からも逃げ出すところから始まり、そこから犬と協力しながら栃木の足尾銅山の洞窟で生活していた前半から始まります。

 このシロとの章には、実の両親よりも信頼できる愛犬のシロとの数々の逸話が語られています。先ほどの15年前の番組でも本人が語っていて本書でも書かれていたのですが、加村さんが熱を出して寝込んでいると犬のシロが布を水に濡らしておでこに何度ものせてくれたくれた話がすごすぎます。

 またそれと同時に書かれていたことが、一番嫌っていた両親たちから自給自足で必要な山で生きる術を自然に仕込まれていたこと。ヘビや昆虫や食べられるキノコの選別、火を起こす際に役立つ木の使い方から生活に役立つ草の選別に至るまで、読むと多岐に渡ります。

   例えば、ミミズを煎じて飲むと解熱剤になることやヨモギで止血できることなんて誰が知ってます(普通の現代人なんて、山の中で一人は三日も持たずに「はい、さようなら」でしょう)。

   だからと言って、加村さんは未だに両親に対しては複雑な感情を抱いています。結果生きるために役に立つ術を与えてくれていたとしても赦すとか言ったような安直な言葉は持てないようです。

 そのあと何年か経った後(普通に自給自足で冬越えしてます!)、シロとの悲しいお別れが待っています。その後足尾を離れ、老夫婦との山でのあたたかい出会いもありますが、ひどい人間不信の加村さんはやっぱり山に戻ります。

 そして、山越えを繰り返すうちに福島県にたどり着きます。

 そこで、食べて生きるために身につけた山の知恵が役立つことを知り、山菜を売っておそらくかなりの量の金額を稼ぎ出しますが、そこで初めてお金の使い方を覚えます。その時多分二十歳ぐらいになっていたみたいです。そこで、黄色い食べ物(カレーやバナナ)を初めて食べます。その感想もすごいです。「カレーの肉より自分で取ったイノシシやウサギの肉の方がうまい」「バナナは皮ごと食べていた」とかです。だからと言って、加村さんはお金を持っていることに特に価値を置きません。基本物々交換です。

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 シロを忘れられずに富士樹海へ 

 山菜売りや珍しい花をとったりしてお金を稼ぎます。しかしそれでも、加村さんにとってあまりお金に価値はないので山に戻ります。愛犬シロのいない寂しさから山の中でタヌキの親子を可愛がったり、熊と闘って撃退もしますが、やっぱりシロのことが忘れられずに死ぬ場所に連れて行ってくれと、トラックの運転手に富士樹海に連れて行ってもらいます。そこで自殺を試みますが失敗します。樹海の中を彷徨ううちに二人の自殺した人の供養もします。骨だけになった人や腐りかけで目玉が飛び出した人を実際に下ろしたりして、、、。

 その後樹海をなんとか脱出した加村さんは、また別のトラックに乗せてもらい栃木の喜連川まで連れて行ってもらいます。その時初めてタバコを吸ったりもしますがそのトラックの運転手が釣り好きだったこともあって、道具を使った釣りのやり方を教わります。

 そして、これもやっぱり始めた時から達人レベルだった加村さん、あっという間にたくさんの魚を釣れるようになります。その時に山菜売りから魚売りになろうと、川の近くに小屋を立てますが全く売れなかったそうです。

 それで、茨城県の小貝川へまた山越えしてたどり着きます。そこで初めての水洗便所体験をしています(世間は昭和50年代のバブル前夜)。そこで、すったもんだの末に小貝川の臨時監視員になって釣りでの自給自足を続けます。

 そんな中、何度か都市化した東京・埼玉・千葉へ行きますが、数々の恐怖体験を経験しやっぱり小貝川のある山へ戻ります。

 この数々の恐怖体験もすごかったです。例えば、埼玉大の字事件、歩いていたら女の人にスナックに連れ込まれ縛られ大の字にさせられて犯されたりします。これが初体験で「気持ちが良かったのではなく、痛かった」だそうです。こんな目には普通に都市部に暮らしていても会わないのに、滅多に人里に降りない加村さんが外に出た時に会ってしまう不運。ただでさえ、人が苦手なのに、、、。

 そこからさらに十数年を小貝川周辺で自給自足して過ごします。

 そして、釣り仙人のようになり徐々に有名になり人々との交流が増えます。そのことで、文明社会との接点が増えていくことで段々と腹が減ることに耐えられなくなります。そこで、捨てられていた原付をなんと直して、自販機を壊してお金を取ろうとしているところで捕まります。文明との接点によって、逆に弱くなり初めて盗みをはたらいてしまう皮肉。ここで逮捕され、報道されたところまでが初めてテレ朝で見た15年前のところまでです。

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 その後、、、

 ここから文明社会への本格的な復帰が始まります。そこからも、再び人間関係を築いたり、それに嫌気がさしてまた小貝川に戻ったりしながらも社会との接点をなんとか持ち続けて、現在は障害者支援施設で働いていらっしゃるそうです。

 最後に

 ここまでかなり端折って書きましたが、逮捕されてからの社会復帰後の話も文庫化された際に100ページほど加筆されていて、視てはいないのですがその部分だけを抽出したたのがNHKのドラマ部分になっていたようです。この部分も施設の人たちとの交流が中心に描かれています。今でも、山に洞穴を掘って寝たりして怒られたりしながら楽しくやっているそうです。ちなみに巻末は加村さんのサバイバル術が特別付録で付いてます。

洞窟オジさん (小学館文庫)

洞窟オジさん (小学館文庫)

  • 作者: 加村一馬
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2015/09/08
  • メディア: 文庫
 

  最後に、加村さんは最後の狩猟採集民としか言えない生活を43年間も続けてこられて、この本を読むといかに今の自分たちの生活が馬鹿らしい無駄なことだらけで、役に立たない知識に囲まれているかがよくわかってしまいます。

 よく食うために働かないとという人がいますが、その人たちのどれだけが本当に食うための知識、本当の知恵を持っているのでしょうか。ただ買うために働いてるだけで、そんな生活をしたことがないのにもかかわらず。

 つまり、日本に限らず自然災害にあった際に、そのほとんどの人が文明社会が機能不全になっただけで、すぐそこにある自然を利用して生きることもできません。最低限自分が生きるための分の食べ物も取れない人しかいない現代で、食うために働くという言葉がただの消費活動を指しているだけで、空疎な言葉だとどれだけの人がわかっているのでしょうか。この本を読むとそれがよく分かります。だから、今からでも最低限の自給自足生活はできるようにならないといけないと本当に思いました。本当に私みたいな都会っ子はダメです。

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