『メルビンとハワード』(原題:『Melvin and Howard』)とは
『メルビンとハワード』(1980年公開)はポール・トーマス・アンダーソンが影響を受けたと常々公言していて、『羊たちの沈黙』で有名なジョナサン・デミが監督した映画です。この話は一般人のメルヴィン・デュマーと大金持ちのハワード・ヒューズが出会ったという奇想天外な話が元になった映画で、笑ったのがほとんど実話だそうです。
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観ようと思った理由
この作品は昔wowowで放送したことがあるぐらいらしく、全く観たことがない作品でした。そして、日本版のDVDは発売されていないので、観ることに二の足を踏んでいました。しかし、ポール・トーマス・アンダーソンの『ザ・マスター』のバイクシーンが本作のオマージュだと知って、渋々観て観ることに。ちなみに、ハワード・ヒューズ役のジェイソン・ロバーズはポール・トーマス・アンダーソンの『マグノリア』に出演してますし、ヒロインのストリッパー役はメアリー・スティーンバージェン(バックトゥザ・フューチャーのドクの奥さんで有名)でした。
そして、英語が理解できるか心配して観て観ると、頭を全く使わずに見れる程度の簡単な英語のセリフしか使っておらず、せいぜい中学校レベルといったところで、心配は完全な杞憂に終わりました。
映画自体は、まず砂漠のシーンから始まり、そこを疾走するバイクに乗った老人、しかし楽しそうに走っていたのに転倒するところから映画は始まります。正味1分程度でしょうか、この冒頭のシーンが『ザ・マスター』のクライマックスのバイクシーンの元ネタで、そのままロケ場所からバイクシーンまでおそらくネバダの砂漠にまで行って撮ったのでしょう。
しかしながら、この映画のバイクシーンはこの冒頭のみで終了です。一切これから出てきませんのでバイクシーンが見たい人は悪しからずです。バイク好きはここを繰り返し観るしかないです。
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そして次に牛乳配達人のメルヴィン・デュマーが暗闇をピックアップトラックで運転しているシーンに切り替わります。そして、路肩に止まって用を足した後に倒れている老人を見つけて、自分のトラックに引き入れます。そして、やたら明るいメルヴィンは自己紹介をしてこのホームレスみたいな老人にクリスマスだから歌を歌おうと、元気づけようとしているのか、ただハイテンションなのかわからないが、素っ頓狂な声で歌い始めます。
そんな中簡単な会話を交わすだけで、老人は老人で大金持ちで有名なハワード・ヒューズだと言い始める始末、今度は老人に無理やり歌を歌わせようとします。それでしょうがなく老人が歌った歌が『バイ・バイ・ブラックバード』で、その曲を二人で合唱した後、夜が明けるまで走って、ラスベガスへ送って電話をかけるための小銭をやったところで二人のシーンは終わりです。ここも短くて5分程度のシーンでしょうか。でも、このシーンはこのシーンで『人生はローリングストーン』の車中の会話シーンを思い出してしまいます。それぐらい短いのに変に鮮烈です。あとは最後に車に乗っていたシーンの回想をするまで一切老人は出てきません。
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タイトルからは想像もできない映画の展開
タイトル通りに行けばこの映画はここから出ても出なくてもハワード・ヒューズに絡めた話を中心に移行しそうですが、そうはならずにこの牛乳配達人の市井の人としての短絡的な日常を描いていきます。ストリッパーの妻と一人娘に逃げられて、また再婚したり、視聴者参加型のテレビ番組の数字当てゲームで大金を妻が当てるもそれを見込んで高い車を買って、愛想を尽かされてまた逃げられる始末。
そして、同じ職場で二人の子持ち女とくっついてガソリンスタンドをやり始めます。そこに、死んだハワード・ヒューズの遺産分与の手紙が急に届けられ、マスコミが集まる自体にてんやわんやします。
それで結局財産は転がり込んではきませんが、男に捨てられた身重のストリッパーの元嫁が娘を連れて戻って来て抱き合って話の本筋は終わります。映画はその後冒頭の二人の車中のシーンに戻ってエンディングへ向かうと行った流れです。
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映画の感想
観た感想は、面白いですが正直なんとも言えない映画です。見方によってはお人好しで短絡的なバカの話で笑えるような気もしますし、正直者はバカを見るような物哀しいような面も感じられます。
つまり、周りに振り回されているバカの人生の話で笑える面もあれば、人生が空回りでついているんだけどついていない人の話のような生きる悲しみみたいな面もある映画です。
だから、観る年代、観る時代、性別の違いなど、観た人それぞれで印象の変わる映画だと思いました。それでもこの映画は難解な言葉も難解なシナリオもなく万人が観てもわかる映画なのが不思議です。
ちなみに、私は観ていて物哀しくなった面が強かったです。しかしながら、観れば人によって印象が変わるはずなので、観て観てはいかがでしょうか。本当に英語は簡単なのでオススメです。