この前ジョン・キューザック主演の映画『クロノス・コントロール』を観たせいで、過去に『ハイ・フィデリティ』(2000)という映画が同主演で上映され、観たことを思い出してしまいました。
内容は寂れた町のレコードショップを細々と営む主人公が恋人との同棲解消によって中年の危機を迎えるといった内容だということは覚えていたんですが、何か心に引っかかっていたのでまた観て観ることにしました。
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もう一度観る前にイギリスで大ヒットした原作があるらしいので、読んでみることに。のっけから別れた女性たちのトップ5です。そこから、過去の恋愛の徹底した言い訳なのか、美化なのかわからないこじらせた35歳独身男の自己憐憫が始まります。ここで主人公は異性のダメなところというよりは自分のダメっぷりばかりを告白していきます。そして、今の彼女が出ていったと。
ここから物語は、主人公は自分のレコード店と出ていった彼女を軸にして徹底して情けなくカッコ悪い中年男の妄想と行動をひたすら取り続けていくというお話です。そこからストーカーになっていき云々のようなホラーや、ひたすら裏目に出ていき空回りしていって云々のようなコメディのお話ではありません。
あくまで等身大の平凡な一人のこじらせまくった男とその周辺を淡々と綴っていくお話です。どちらかといえば、微妙な心情や誰もがしているような失敗ばかりが綴られています。じわじわとくる共感がこの物語の一番の売りでしょう。
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話は逸れますが、この本が出版されたのが1995年なので、これがベストセラーになるイギリスって相当進んでます。その当時の日本じゃまだバブルの名残が残っているので、一般的な日本人が読んでもほとんど人が共感不可能だったのでは、、、。
20年をかけて日本が、工場と学歴階級社会で閉塞感のあるイギリスと同じようなある種の階級社会へと変わっているような気がします。現代ならこの主人公の心情がよくわかる人が私以外にも多いと思うので。
しかしながら、この本はそんな閉塞感を忘れようとしているのか、見ないように現実逃避しようとしているのか、音楽にハマり続けていることだけが主人公の救いとなっています。
だから、出ること出ること主人公の好きなバンドや曲名が!!昔だったら、ここに出てくる音楽の話はチンプンカンプンだったでしょう。自分が怖いです、今ではほとんどわかります。おまけに映画でもかかる音楽もほぼ全部わかるようになってました。
そして、子供の頃に見た時はThe Jesus & Mary Chainの『Psychocandy』しかわかりませんでした。今は映画の中で主人公が落ち込んだ時に行ったバーのシーンでピアノの弾き語りがあるのですが、そのピアノの上に置いてある写真がジェリー・ウェクスラーじゃないかとすぐ反応してしまいました。これも自分が怖い、怖すぎるよ。いつの間にか立派な音楽マニアに自分もなっている。
映画は私のマニア度を測ることとは別にして、ロンドンからシカゴへ場所を変えつつ原作で使われていたセリフや話をうまく組み合わせながら、主人公をシェークスピア劇で使われるような語りと動きを使って面白く表現しています。こじらせ中年男の悲喜こもごも讃歌です。主人公のジョン・キューザックを始め、配役が絶妙にマッチしているので原作を読んだ人が観ても裏切られることはないと思います。店員役のジャック・ブラックなんてどハマりしてます。その後の『スクール・オブ・ロック』にも絶対に繋がってます。彼女の友達役で出てたジョンの姉のジョーン・キューザックも『スクール・オブ・ロック』でまた共演してますしね。
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といったわけで、この物語と映画は老若男女にオススメの映画というよりも中年の音楽好きにオススメの映画です。若者にも共感するとか特典映像で言ってましたけど、私が観た当時は近所の悪ガキ二人組しか強く印象に残ってません。ジョン・キューザックがくたびれてるだけの変な映画といった印象でした。
しかしながら、今は違います。こじらせた大人に声を大にして言いたいです。クロノス・コントロールのように「見ろ」と!!