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『ヤング≒アダルト』セックス・アンド・ザ・シティ好きには痛すぎる内容の映画

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ヤング≒アダルト (字幕版)

 『ヤング≒アダルト』はジェイソン・ライトマン監督、シャリーズセロン主演で2011年に公開された映画。

 内容は地元の田舎から都会のミネアポリスに出て、作家兼ゴーストライターとしてそこそこ成功しているアラフォーの37歳の独女が主人公で、家族がいる学生時代の元彼と寄りを戻そうと地元の田舎に戻って痛い言動を繰り返す話の映画です。

 以前見た時は、夜中にシャリーズ・セロン見たさに観て、オープニングシーンのカーステレオで繰り返し流すTeenage Funclubの「The Concept」につられて、つい最後まで観てしまいました。観た時は、映画より前に「The Concept」を聴きながら自転車に乗って転倒し、前歯を折った痛いを記憶を思い出しもしましたが、この映画の主人公も痛いとは、、、。


 今回この映画を見直すと、

 都会的女子生活者のバイブルと言える『セックス・アンド・ザ・シティ』の対極に位置する映画で、主人公と同性の女性が一番観たくなさそうな内容に容赦無く仕上げられているので、監督は何か女性に恨みでもあるのかなと思いながら観ていました。そして、ジェーン・スー著の『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』のタイトルがなぜか頭によぎります。

 それに、この作品も含めジェイソン・ライトマン作品に一貫してあるテーマが「時間」についてなので、脚本も当然監督が書いているのだろうと勘違いしていましたが、調べて納得です。脚本家が監督ではなく女性でした。ディアブロ・コーディという女性脚本家で、今作を含め女性が主人公の『Juno』(2007)、『Tully』(2018)でも監督とタッグを組んでいました。この二作も女性に容赦ないという点では一貫してるので怖いです。やっぱり女性は女性に厳しい。

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  そして、この作品の女性に容赦ない点とは、

 女性が隠したがる部分をこれでもかと内容映像共に強調する映画だからです。『セックス・アンド・ザ・シティ』が好きそうな都会的オシャレ女子を、ブランド好きの厚化粧のオバハンとして、丁度いい感じの嫌な塩梅で映します。そして、その洗練されたように見える都会的な生活の先にある見栄とハッタリしか残らない虚無感を、都会から戻った女主人公と田舎を使って対比させながら炙り出していきます。

 例えば、美人でスタイル抜群で頭も良さそうに見える完璧なシャリーズ・セロンをひたすら汚く撮ります。

 その完璧な美女のうつ伏せになった背中をだらしなく見えるように撮りますし、シミもシワもややたるんだ身体もはっきりと最初から最後まで撮り続けます。もし他の女性だったらもっとひどいのでは、、、。

 つまり、あのシャリーズ・セロンでさえも、これでもかとこの映画の中では女の醜いところを絶えず強調されますので、化粧をバッチリ決めれば決めるほど、どんどん醜く見えてきます。

 かといって、映画に出てくる他の女性たちが田舎で魅力的に見えるように撮っているのかというと、それも違います。主人公と同じくらいダサくて退屈な人たちとして容赦なく撮ります。その意に沿って、建物や風景はこれでもかと綺麗に撮りますが、女性たちは主人公と同じくらい醜くてズルさが滲み出るように撮っていて、決して単純な対立軸にしません。

 つまり、脚本は女性ならではというか、女性特有のズルさ、下品さ、汚さ、弱さというか弱みを全ての女性を使って表現しているようにしか見えないです。厳しすぎますよ。この美人女性脚本家は。男性脚本家だとここまで徹底的にコキ下ろせませんよ。女性を怖がって、、、。

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 しかしながら、先ほども書きましたが、洗練されていると思い込んでいるのとは裏腹に消費しているだけの都会的な生活。

 その先にあるただの見栄とハッタリだけの虚無感。欲深くなればなるほど何も手に入れられない人生の虚しさがこの映画では強調されています。この映画の主人公のように全てを手に入れたような自分の人生が、その実何もないことに気づいて狂気に走り、救いを思い出に求めて過去に時間を戻そうとする虚しさ。

 しかし、「時間」はどんな時も進んでいくので、決して戻りません。そして、最後に主人公が正気を取り戻しても、「時間」からは決して逃げられないし、「時間」とは取り返しのつかない大事な人生そのものだというメッセージで幕を閉じます。真剣に意味を掘り下げると辛すぎるし、悲しすぎますよ。この監督の映画はいつも。

ヤング≒アダルト (字幕版)

ヤング≒アダルト (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

  ところで最初の話に戻りますが、この監督の映画も最後の終わり方がどの作品でも、いい意味でも悪い意味でも取り返しのつかない「時間」で締めくくるので、今まで女性脚本家とのタッグに気がつかなかったのは不覚でした。

 またそれとは別に、この監督は映画の中で女性にパーカーを着せるのと歌わせるのが好きなことに、今作で気づきました。ジェイソン・ライトマンはパーカーカラオケ時間監督です。あと音楽もこの監督の作品では最高ですから、作品の内容と選んだ音楽のテーマを絶妙にシンクロさせる名人ですので。

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